養育費のために公正証書を作るメリットと書き方

法律相談

民法上、親には子どもを扶養する義務があります。そのため養育費は子どもの権利であり、よりよい成長のための大切なお金です。収入面で厳しい母子家庭にとっては、養育に必要不可欠な資金でもあります。しかし実際は、離婚時に約束したはずの養育費を支払わない旦那がたくさんいます。滞納された場合に備えて、あらかじめ法的に使える書面を作っておけば安心です。

養育費の取り決めをするときには、公正証書を作成しておきましょう。公正証書があれば、裁判を起こさなくてもスムーズに強制執行が可能です。

養育費のために公正証書を作るメリットと書き方を詳しく解説します。

公正証書とは|その効力と誓約書・契約書との違い

公正証書とは

公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書のことです。公証人は裁判官や検察官などを長年務めた法律の専門家であり、正確な法知識と長年の経験に基づいて法的に間違いのない文書を作成してくれます。

公正証書には「証明力」と「執行力」があります。「証明力」とは法的に真正であることを証する力、「執行力」とは公正証書をもって差し押さえなどの強制執行を行う力のことです。

養育費に関する取り決めをした離婚協議書を公正証書にしておけば、離婚協議書が法的に正しいものであると簡単に証明できます。また、裁判所から判決を得なくても財産を差し押さえることが可能です。

離婚をする場合は、必ず「離婚協議書」を公正証書にしておきましょう。

公正証書はどこで作るか

公正証書は公証役場で作ります。基本的には夫婦が公証役場に出向いて作成しますが、弁護士や司法書士、行政書士に依頼して作ることも可能です。

公証役場は全国各地にあります。公証役場は各地方の法務局に属しており、管轄も各地方の法務局が管轄する範囲と決まっています。自分が住んでいる住所地の法務局を調べ、管轄の公証役場を調べておきましょう。管轄外の法務局では作成できないため、注意してください。

公正証書のポイント・注意点

公正証書は、手書きの誓約書や契約書とはまったく違うものです。契約自体は、手書きの誓約書などでも有効に成立します。しかし公証人以外が作成したものは公正証書ではなく、公正証書ではない書面は訴訟をしなければ強制執行できません。

ちなみに、公正証書は公証人がパソコンなどで作成します。昔のように手書きではありません。

公正証書を作るには、夫婦二人が公証役場に出向く必要があります。出向くことが難しい場合は調停を起こして調停調書を作るか、弁護士などの代理人に作成を依頼しなくてはいけません。

調停は心身に負担な上、離婚が長引いてしまいます。また、弁護士などに依頼すると費用が必要です。公正証書の作成は難しい手続きではないので、公証役場の人に聞きながら十分自力でも作ることができます。

公正証書の原本は公証役場に保管されます。紛失しても再交付が可能です。

養育費を支払ってもらうための公正証書の作り方と流れ

公正証書が強力な書類で難しい手続きではないとしても、多くの人にとってはなじみのない手続きです。上手く作れるのか、不安だと思います。公正証書ができるまでの流れを確認しておきましょう。

事前準備:離婚協議書を作る

公正証書を作るには、まずは元になる離婚協議書を作ります。

離婚協議を行って、養育費や慰謝料の支払い条件など離婚についての約束事を夫婦で決めましょう。コツはできるだけ細かく取り決めておくことです。月々の支払金額、分割支払いか一括支払いか、振込みの場合の手数料はどちらが負担するのかなど、細かく決めておくとあとで揉める心配が減ります。

話し合いの内容をまとめ、離婚協議書を作成します。離婚協議書に決まったフォーマットはありませんが、公正証書にする離婚協議書には必ず養育費の取り決めを入れましょう。養育費の項目として、以下の内容を記載します。

  • 月々いくら払うか
  • いつからいつまで支払うか
  • 支払う預金口座
  • 振込手数料はどちら持ちか
  • 転職、再婚、養育費の額に影響を及ぼす事項が生じた場合はお互い通知すること
  • 支払を履行しないときは直ちに強制執行に服すること

特に、最後の強制執行の内容は大切です。これが書かれていない公正証書では強制執行を行うことができません。書き忘れないように注意しましょう。

公正証書の作成までの流れ

離婚協議書ができたら、いよいよ公証役場で公正証書の作成依頼をします。しかし突然行っても作ることはできません。必ず事前に公証役場に連絡し、FAXやメールなどで内容の打ち合わせを行います。内容の打ち合わせは、アポを取ったうえで公証役場を訪れてすることも可能です。

公証人と作成日時を相談し、7~10日後、夫婦ふたりそろって公証役場に出向きます。次のものを持っていきましょう。

  • 夫婦の身分確認資料(写真付きの身分証明書か印鑑登録証明書)
  • 手数料

手数料は養育費や財産分与の価格によって異なります。打ち合わせ時に公証人に確認しておくと安心です。

当日は、まず公証人による公正証書の閲覧または読み聞かせが行われます。内容に間違いがないかを確認するラストチャンスです。夫婦で約束した内容と同じ公正証書になっているか、しっかり確認しましょう。

内容の確認が終わったら、公証人と夫婦で署名押印をします。署名押印されたものが公正証書の原本となり、原則20年間公証役場で保管されます。

夫婦には正本と謄本が交付されます。支払いを受ける側が正本を、支払う側が謄本をそれぞれ保管します。

養育費と公正証書の注意点・よくある質問

養育費に関する公正証書を作る際、特に注意してほしいことが2点あります。

1点目は、離婚協議書には必ず養育費に関する取り決めを記載しておくということです。

シングルマザーの実に54.2%が養育費の取り決めをせずに離婚しているというデータもあり、多くの母子家庭が養育費を受け取れていないのが現状です※1。旦那が憎いあまり養育費さえ受け取りたくないという人や、とにかく早く離婚したくて養育費を求めなかったという人が多いようです。

しかし、親には子どもを扶養する義務があります(民法877条)。養育費の支払いは親としての義務であり、言いかえれば子どもは養育費を受け取る権利があります。子どもの権利が不当に奪われないよう、必ず養育費の取り決めを行い、離婚協議書に記載しましょう。

また、養育費をそもそも支払わないことを記載したとしても、その記載の効力が後に法的に否定される可能性もあります。なぜなら、親は子どもに対して扶養義務を負うからです。

2点目は、公正証書を作れば必ず支払ってもらえるというわけでないということです。強制執行認諾文言の明記がない公正証書は強制執行の根拠にはならないため、滞納があった場合でも裁判なしで差し押さえることができません。

強制執行認諾文言とは、次のような条項のことです。

「・・・に記載の債務履行を遅滞したときには直ちに強制執行に服する旨陳述した。」

必ずこのような文言を含んだ離婚協議書で公正証書を作成しましょう。

強制執行認諾文言があったとしても、残念ながら差し押さえができないケースもあります。相手の住所や職場がわからない場合は強制執行ができないのです。相手が勝手に引っ越して連絡がつかない場合などは、興信所や弁護士会照会を使って自力で相手の情報を調べなくてはいけません。

また、相手の資産がない場合や無職の場合も差し押さえが難しくなります。いくら強制的に支払いを受けようと思っても、支払えるだけの資力がなくてはいけません。相手の経済状況によっては、公正証書も役にたたないことがあります。

まとめ

公正証書とは公証人が作成する公文書のことで、法的な証明力と執行力を持つ、とても強力な文書です。離婚協議書を公正証書にしておけば、訴訟を起こさずに養育費の差し押さえが可能になります。

公正証書は夫婦で公証役場に出向いて作成します。弁護士や行政書士などに依頼することも可能です。公証役場には全国各地にありますが、管轄があることに注意してください。

公正証書を作成するには、まず事前に内容を公証人と打ち合わせる必要があります。公正証書にしたい離婚協議書を持参やFAXなどで公証人に見てもらい、修正点などを確認します。法的におかしい箇所などは公証人が指摘してくれますが、養育費の金額などのアドバイスはしてくれません。

公証人と約束した日時に公証役場を訪れ、公正証書を受け取ります。公正証書は原則20年間公証役場に保管されるため、紛失してしまっても安心です。

 

【参考】

※1 厚生労働省 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果

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